うちのイキりおじいちゃん(71)
「わしは少林寺拳法4段、空手3段。計7段や」
「売られた喧嘩は全て買った。最近になってようやく謝る事を覚えた。そうしなければ相手を怪我させてしまうからな」
「喧嘩した相手と後日すれ違ったら、向こうから頭下げてきたもんだ」
「わしはあの歴史に残る女優や歌手を脱がせてきた。裸にもさせた。乳も吸うたったわ」
この辺が挨拶がわりのジャブとしてお馴染み、大変お世話になっているうちのイキりおじい(71)(左足小指骨折中)(左足薬指骨折中)
イキりが嘘か真か本人以外はつゆ知らず。
先日もおでん屋でカウンターにて同席したお客さんと調子よくお話してましたとさ。
やれあーだ、それこーだ。
今おじいが話している人、昔はここで会ったことあるんだけど忘れてるだろうななんて思いつつ。
腹一杯になったかなんて聞かれても、私500キロ車で走って来たから食べる気力ないんやて。
ほらまたお客さんたちが500キロに食いついて話の中心が自分じゃなくなったからオモロくない顔しとるやん。
またイキるんやろ。ほらな。
そんな事を思いつつ。
ビールとおでんと出し巻き卵を頂きつつ。
で、次に行ったスナック。
マスターは身体の調子が長く優れず、ママともう1人で店回しているカウンターだけの如何にもなスナック。
うちのイキりおじいが長く常連として通う場所。
なんなら裏のマスターとも呼ばれているらしく、ママにあれ歌ってこれ歌ってと指示が飛ばす。
きょうもおじいはぜっこうちょうです。
いつも通り20時までゆっくり楽しんで行こうとした矢先でした。
突然ですが、縁なんてどこで繋がっているか分からないものです。
ここで以前おじいに会い、もう一度会いたいと言っていた人が居ると。
しかもその人がもう来ると。
普段は20時に帰るおじいも、そう言われたらと迎えのタクシーを延長。
おじいの様子がおかしい。
なんだか尻が落ち着かないみたい。もう帰る、もう帰ると連呼。
そわっそわして待つ事ちょっと。
来ました。お年を召した女性。
おじい困惑の表情。
するとどうでしょう。
得意のイキりもどこへやら。
どこからどうみても普通の女性なんやけどな。なにかあったんやろうな。きっとね。そうじゃなきゃ相手から(71)がお兄ちゃんなんて呼ばれへんわ。
飛び込みの伊豆の国市から来たとかいうおっさんはカウンターの反対側で静かにしてろ。茶化すんじゃねぇ同郷人。
二人の世界でダンスをしつつ。
ママは指定された歌を唄いつつ。
私はオールドパーを飲みつつ。
気づけば21時。
おじい、帰るってよ。お疲れ様でした。
で、次の日。
あざっしたーと挨拶しに向かうと、真剣な顔したおじいがそこに。
どしたんですーなんて聞いてみた。
すると昨日の相手は「30代を共にした相手の妹さん」だったそうで。
いやー、不思議。
気持ちだけ30代に戻ったようだったみたい。だからすっかりイキりも取れちゃって。
思い出に浸っていたのですね。
きっとおじいの30代はこんな感じだったのでしょう。
青春はいくつになってもあるんだなって。
それにしてもあの変わり様があまりに滑稽ならぬ面白かったのでブログに書いた次第。ただそんだけ。
生存報告も兼ねた更新でした。
おしまい。
あれ、でもおじいって(28)で結婚してたような……